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東京地方裁判所 昭和32年(モ)1799号 判決 1958年5月09日

理由

一、 債務者会社においては先に予備株券をも含めて一〇〇〇株券一五〇余株の印刷を完了し、発行済株式総数一四〇〇〇〇株の内七四〇〇〇株については株券を発行し、未発行分六六〇〇〇株についても何時にてもその発行をなし得べき状態にあつたことが認められる。

従つて、債務者の債権者に対する本件株式(未発行)の譲渡は、譲渡人であり且つ債務者会社の代表取締役たる債務者に株券を発行せしめて商法二〇五条の所定の方式によつてのみこれをなすことを要し、然らざる限り該譲渡はその効力なきものと断ぜざるを得ない。

(商法第二〇四条第二項、第二〇五条)

二、本件取締役会は取締役たる債権者両名にその招集通知をなすことなく開催せられ結局一部取締役の集合に過ぎなかつたものであるから、右取締役会の決議は無効であるばかりでなく、株主総会を招集しうる権限を有するものは代表取締役たる債権者両名のみであるから、無効の取締役会の決議に基き代表取締役でない債務者取締役の招集にかかる本株主総会において債権者両名の取締役たることを解任し、債務者両名を取締役に選任する旨の決議がなされたとしても,該決議は不存在というべきである。

(商法第二三一条、第二三二条、第二五九条ノ二、第二六一条、民法第一一九条、商法第二五二条)

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